「iDeCoは資金が拘束されるから…」と躊躇していませんか?
20代・30代の方から「iDeCoは60歳まで引き出せないから、今始めるのは不安」という声をよく聞きます。
確かに、結婚、出産、住宅購入など、これから大きな支出が控えている若い世代にとって、資金の拘束は大きな懸念材料です。
でも、実は「少額でも早く始めること」が、将来の税負担を大きく左右する。という事実をご存じでしょうか?
誤解されがちな「退職所得控除」の仕組み
多くの人が見落としているのが、iDeCoの受取時に適用される「退職所得控除」は、金額ではなく「加入年数」で決まるという点です。
退職所得控除の計算式
- 加入20年以下: 40万円 × 加入年数
- 加入20年超: 800万円 + 70万円 × (加入年数 – 20年)
具体例で見る控除額の違い
ケース1: 25歳から月5,000円で開始(加入35年)
- 退職所得控除: 800万円 + 70万円 × 15年 = 1,850万円
- 積立総額: 約210万円(運用益除く)
ケース2: 40歳から月2万円で開始(加入20年)
- 退職所得控除: 40万円 × 20年 = 800万円
- 積立総額: 約480万円(運用益除く)
ケース1は積立額が少ないにも関わらず、控除額は1,050万円も多くなります。
なぜ「年数」が重要なのか?
退職所得控除は「長期間働いた人の退職金を優遇する」という趣旨で設計されています。
そのため:
- 20年を超えると控除額が年70万円に跳ね上がる
- 金額の大小ではなく、期間の長さが評価される
つまり、月5,000円の少額でも、早く始めて加入年数を稼ぐことが最大の戦略になるのです。
会社の退職金との関係も重要
さらに知っておくべきポイントがあります。
会社の退職金とiDeCoを同時に受け取る場合、「長い方の勤続年数(加入年数)」が採用されるが両方に退職金所得控除は適用されないという点です。
例:会社勤続30年、iDeCo加入10年の場合
- 使える退職所得控除: 30年分の1,500万円のみ
- iDeCoの10年分は退職金所得控除が使えない
つまり、会社の退職金を貰う予定の人は、iDeCoの加入年数を伸ばしてもiDeCoの退職金所得控除額は増えない可能性があります。
では、どうすればいい?
受取時期をずらすことで、退職所得控除を2回使うことができます。
ただし、受け取る順番によって必要な間隔が異なるので注意が必要です:
- iDeCoを先→退職金を後: 10年以上空ける(2026年1月以降)
- 退職金を先→iDeCoを後: 20年以上空ける必要がある(19年ルール)
退職金を先に受け取る場合、例えば60歳で退職金を受け取ると、iDeCoは80歳まで待つ必要があります。しかしiDeCoの受給上限は75歳のため、この順番では実質的に年金受取を選択するしかありません。
つまり、両方を一時金で受け取り、控除を2回使いたい場合は「iDeCo→退職金」の順番が必須です。すると、iDeCoを受け取る際に10年の退職金所得控除を使えて、それから10年後に退職金を受け取るようにするとこちらにも退職金所得控除が使えるのです。
若いうちに始めるべき3つの理由
1. 20年超のボーナス控除を獲得できる
20年を超えると控除額が年40万円→70万円に増額されます。
- 25歳開始(35年加入): 控除1,850万円
- 45歳開始(15年加入): 控除600万円
- 差額1,250万円
2. 受取タイミングの選択肢が広がる
早く始めれば、60歳以降に:
- 「すぐ受け取る」
- 「退職金より先に受け取り、10年後に退職金を受け取る」
- 「75歳まで運用を続ける」
など、柔軟な選択が可能になります。
重要: 退職金を先に受け取ってしまうと、iDeCoで控除を満額使うには20年(実質80歳まで)待つ必要があり、iDeCoの受給上限75歳を超えてしまいます。
3. 少額でも毎年の所得控除メリットがある
月5,000円でも年間6万円が所得控除の対象です。
- 所得税率20%+住民税10%の場合: 年間1.8万円の節税
- 35年間で63万円の節税効果
「少額でもいいから早く始める」が正解
結論として:
- 金額よりも「年数」を稼ぐことが重要
- 20年を超えると控除が大幅アップ
- 受取時期の調整で控除を2回使える
資金の拘束が不安なら:
- 月5,000円からスタート(年間6万円)
- 余裕ができたら増額も可能
- 年1回まで金額変更できる
「いつか余裕ができたら始めよう」ではなく、「今、少額でも始めて年数を稼ぐ」。
これが、若い世代のための最も賢いiDeCo活用法です。
注意事項
- 本記事は2025年11月時点の税制に基づいています
- 2026年1月以降、「iDeCo先→退職金後」は10年ルール、「退職金先→iDeCo後」は19年ルール(20年間隔)が適用されます
- 税制改正により内容が変更される可能性があります
- 個別の状況については、税理士やファイナンシャルプランナーにご相談ください
- iDeCoは元本割れのリスクがあります


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